性的虐待被害者を支援する方へ

全てを肯定すること。責めないこと。

「よく話してくれたね。」開口一番、この言葉を伝えてください。

そして、

本人の言っている内容がたとえ支離滅裂でも、

一切の否定をしないで、すべてを肯定してください。

 

目の前にいる相談者は、

たとえ40代の立派な大人でも、

あなたに大切なことを話している瞬間は、

「あの時誰にも言えなかった、ちいさな子ども」なのです。

 

そして、責めないでください。「WHY?(なぜ?)」は禁句です。

 

「なぜ抵抗しなかったの?」

「なぜ誰にも相談しなかったの?」

「なぜ?」

は、本人を責めることになり、二次加害となります。

 

あなたが想像もつかない長い長い間、

本人は自分を責め続けてきました。

やっと、あなたに打ち明けることができた

「小さな子ども」を、これ以上、責めないでください。

 

そして、本人の自尊心の回復を、ひたすら信じてください。

「あなたには、その力があるよ。」と、

背中にそっと手をあてる気持ちで、「フォロー(ついていく)」してください。

 

どうか、お願いします。

 

責めない、変わらない、尽くしすぎない。

激しい後遺症に悩む方のそばにいて、

激情の嵐とハネムーン期の往復にとまどうパートナーの方にとって、

男性である自分には真に理解できないのではないかと苦しまれている方もいるでしょう。

 

しかし、

回復のための重要な鍵は、「パートナー」の存在なのです。

 

一番多く聴かれるのが、

 

 

「別れたいとしょっちゅう言われます。」

 

 

なのですが、

 こんなとき、どうしたらいいのでしょうか?

 

 

キーワードは、「責めない、変わらない、尽くしすぎない。」

 

◆「責めない」

 

これは基本ですが、人は誰でも責められると感じると防御の体勢になります。耳や心を閉じ、責めている相手の言うことを聴くどころか、相手に反撃を開始します。それはもう電光石火の勢いです。あなたが伝えたいことは万分の一も伝わりません。

「否定形」の会話も同様です。

 

特に深い傷つきを抱えている人は「そんなことで」というような、

相手のたてた物音、しぐさ、眉毛ひとつの微妙な動きで恐怖を覚え、萎縮し、動物的反射で反撃します。

これは彼女の防御本能、彼女自身が生きるための活路として見出したサバイバルテクニックなのです。

 

そしてその根底にあるのは「絶望」です。

 

「自尊心の失墜」を経験した

彼女の「怒りの仮面」の裏には、信じがたいほどの絶望と悲しみの本心があるのです。

 

それを想ったときに、

あなたの表情も本来の彼女への愛情、慈しみに溢れ、穏やかになると想います。

そして、

すべての会話を「肯定形」に変えていきましょう。

どうしても伝えなければならない否定形は、肯定→否定→肯定(自分の気持ち→事実→自分の気持ち)の「サンドイッチ」にしてください。

おのずと「責める」ということはなくなり、徐々に彼女の様子も変わってくることに気づくはずです。

 

◆「変わらない」

 

 まずは、ご自分自身がしっかりと、大地に足を踏みしめて、

彼女を落ち着いた温かさで、受け止めてください。

態度や言動を急変させないことが重要です。

 

「変わらない愛情」を示してください。

 

激しい感情の嵐に翻弄されている本人が知らずに求めているのは、

「私がどんな人間であっても、変わらない愛情を示す人」なのです。

 

絶対的信頼が必要だった時代に、それをある日突然失った彼女だからこそ、(愛情の激変と喪失)それが必要なのです。

 

 

◆「尽くしすぎない」

 

最後に、「境界線」はハッキリと示してください。

彼女自身はここがあいまいなので、とても大事なところです。

 

「ここからここまでは僕のエリア(範囲)だよ。ここからここまでは君のエリア(範囲)だ。」と。

 

あなたが独りで過ごす趣味の時間、仕事の時間帯、

それらは「僕のエリア(範囲)」だから、譲れないものであるなら、譲れないとハッキリ伝えます。

 

そして、「選択」をさせてあげてください。

 

彼女に必要なのは、「自らが選択をすること」なのです。

 

「〇〇した方がいいんじゃない?」

 

という言い方よりも、

「〇〇するのと、▲▲するのとあるけど、君はどっちがいいかな?」と彼女自身に選択の機会を作ります。

 

「境界線の認識」と、「選択の経験」をより多く積み重ねることにより、

彼女の絶望感や不安は、徐々に薄くなっていきます。

 

「自分の心と体を傷つけられた」=「自分のエリア(範囲)に侵入された」、「選択の余地はなかった」

経験をした彼女だからこそ、

これを取り戻すために、

 

「安全な自分のエリア(範囲)を守る権利がある」

「私は選ぶことができる」

 

という自尊心を確立することが必要です。

 

 

 

 

 

性的虐待、身体的虐待、精神的虐待を受けた人以外にも、

「過保護」という名の虐待を受けた方も同じように「感情の起伏が激しくなる」ことがあります。

これはいったいなぜなのか?

 

それは、

「自尊心の失墜」を経験しているからではないでしょうか。

 

「虐待」と「過保護」の共通点は、

「あなたは独りで立っていることもできない価値の無い人間だ」と、

想いこまされることにあります。

 

誰しも人間にとって必要なものは、

 

「あなたを独りの自立した人間として心から尊重しているよ」という、たった一人の存在なのです。

 

そんな人がたった一人でもいてくれたら、人は強く生きていけるのです。

 

相手の自尊心を尊重してください。

 

もちろん、ご自分自身の自尊心も、です。